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「ライヴ・アット・ザ・アストリア」~初期レディオヘッド唯一の公式ライブ映像

「ライヴ・アット・ザ・アストリア」は初期レディオヘッド唯一の公式ライブ映像です。DVDのケースにも書かれているのですが、ロンドン・アストリアで行われた1994年5月27日の演奏を収録したものです。翌年の1995年3月にVHSで発売、2005年にはDVD化されました。

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セットリスト

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▲歴史を感じる渋い外観の「ロンドン・アストリア」

1994年といえばレディオヘッドにとって、1993年に発売したアルバム「パブロ・ハニー」と1995年の「ザ・ベンズ」の合間にあたります。

「ザ・ベンズ」発売前の先行シングル「マイ・アイアン・ラング」のミュージックビデオがこの映像をつかっているので、もしかすると「マイ・アイアン・ラング」用に撮られたのかもしれません。

セットリストは「パブロ・ハニー」から8曲、「ザ・ベンズ」から7曲、アルバム未収録のシングルが1曲、シングルB面が1曲と、バランスよく選ばれています。

もちろん、熱心なファン以外には半分が新曲という、なかなか思い切ったセットリストだと言えるでしょう。当然、1枚のアルバムと数枚のシングルしか出していなかったので1時間強の演奏をするには曲数としても、たらないわけですが、限りなく新人に近いバンドとしては勇気が必要だったのでは、と思います。

1994年の英国

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▲1994年頃のレディオヘッド

「ライヴ・アット・ザ・アストリア」が演奏された1994年の音楽シーンをざっくりまとめてしまえば、マッドチェスター(マンチェスター・サウンド)とグランジ(これはアメリカが中心ですが)が終わり、ブリットポップ誕生の年でした。

これを観点に時系列順にすると、こんな感じになります。

3月 ブリットポップの誕生を告げる、ブラーのシングル「ガールズ&ボーイズ」(全英最高4位)

ザ・スミス解散後、4作目のソロにあたるモリッシーのアルバム「ヴォックスオール・アンド・アイ」。前作「スクリーマデリカ」でアシッド・ハウスとロックの融合と絶賛されたプライマル・スクリームの、失敗作といわれた「ギヴ・アウト・バット・ドント・ギヴ・アップ」。

4月 グランジの終息を予感させた、カート・コバーン(ニルヴァーナ)の自殺。ブラーのアルバム「パークライフ」(全英最高1位)

6月 パルプのメジャー2作目にあたる「彼のモノ?彼女のモノ(His ‘n’ Hers)」全英最高4位)

8月 失踪してしまったリッチー・ジェームスの最後になるマニック・ストリート・プリーチャーズの3枚目「ホーリー・バイブル」(全英最高6位)

9月 オアシスのデビュー・アルバム「オアシス」(全英最高1位)

10月 バーナード・バトラーが脱退するきっかけになった、スウェードの2ndアルバム「ドッグ・マン・スター」(全英最高3位)

12月 マンチェスター・サウンドの雄であった、ザ・ストーン・ローゼズ「セカンド・カミング」(全英最高4位)

その他にはザ・ヴァーヴやティーンエイジ・ファンクラブ、ザ・シャーラタンズなどが活躍していました。ちなみにレディオヘッドはこの年の10月にEP「マイ・アイアン・ラング」を発売しています。

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「クリープ」の一発屋

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▲フランスのテレビ局で「クリープ」を歌う前のトム・ヨーク

1992年に全英最高7位でスマッシュヒットを飛ばした「クリープ」は5曲目。観客の盛り上がり方は半端ないです。ほぼ、全員が歌っています。両手をあげた観客たちが波のように揺れています。

実質的なデビューシングル「クリープ」以降、「エニワン・キャンプレイ・ギター」「ポップ・イズ・デッド」は全英2ケタ台の売れ行きでしたが、4枚目の「ストップ・ウィスパリング 」は圏外でした。

ブリットポップの台頭に消え去っていく一発屋レディオヘッドの1曲と思われていたとしても不思議ではありません。「クリープ」を演奏しないと観客に受けない状況だったのでしょう。

でも、僕はぞっとするほど嫌なやつなんだ
僕は変わり者なんだよ
いったい、ここで何をしているんだ?
もう、ここに居場所はないのに

こんな「クリープ」のサビを観客と一緒に合唱されたら、トム・ヨークでなくても、さすがにうんざりしてきます。後年、レディオヘッドは「クリープ」を演奏しなくなっていきました。

「ライヴ・アット・ザ・アストリア」の魅力

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▲ラストソングを終えたトム・ヨークの捨て台詞「じゃあな!!」の瞬間

映像から伝わるのは、オルタナティヴ・ロックやポスト・パンク、シューゲイザーの影響を受けた、良い意味で荒っぽいギターを全面に押し出した演奏です。ツインギター、曲によってはトム・ヨークを含めたトリプルギター。それをドラムとベースのリズム隊がクールに支える…完全にギターバンドのサウンドです。

特に目立つのがエド・オブライエン。もちろん、フロントマンであるトム・ヨークがメインなので一番です。映像のアップ数が最も多いでしょう。また、リードやオブリガードを担当し、スポットライトがあたるのはジョニー・グリーンウッド。

ただ、エド・オブライエンのフィードバックを多用した空間系のギターと、トム・ヨークと絡むコーラスは圧巻です。初期レディオヘッドの語るにはエド・オブライエンの存在が不可欠と言えるのではないでしょうか。

「ライヴ・アット・ザ・アストリア」は、アルバム「パブロ・ハニー」でも最後の曲だった「ブロウ・アウト」で終わります。カオスな轟音の場が続いたあと、トム・ヨークがマイクに「じゃあな!!」と客席に叫んで、幕を閉じます。

以前からこのタイトル、正確には「ライヴ・アット・ジ・アストリア」でないかと思っていたのですが…VHSでは「ライヴ・アット・アストリア」、DVDでは「ライヴ・アット・ザ・アストリア」…で発売されてます。原題は「Live at the Astoria」、英語版DVDは「Astoria London Live」です。

まあ、「細かいところが気になってしまうのが、ぼくの悪い癖」ってやつですね。

by yosh.ash

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