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ジャコ・パストリアスが追い求めた自分の音~骨折が生んだベーシスト

ベーシストにはヒーローが誕生しづらいと言われています。しかし、音楽シーンを見渡してみると、革新的なプレイによってインパクトを残した人がいます。
ジャコ・パストリアスもその一人でしょう。

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骨折がスタートさせたベース

画像2ジャコ・パストリアスは祖父や父に音楽の素養を持つ環境に育ちました。そのため幼少期には聖歌隊に入り、音楽的な素養を自らも持つようになったのです。

成長したジャコはジャズドラマーに憧れ、ドラムの練習に励んでいました。ところが13歳になった頃、フットボールの練習中に左手首を骨折してしまいます。

手首の骨折によってジャズドラミングで重要になってくる複雑なシンバルワークが困難になり、ジャコはドラムを諦めざるを得ませんでした。

しかし、ジャコの音楽への好奇心はついえることなく、楽器はドラムからベースへと向かいます。そして13歳で始めたベースを17歳までに完全に弾きこなすようになるのです。

幼少期の聖歌隊で培ったメロディセンスとドラムで体得したリズム感でベースを十分に弾きこなすセンスを身に着けたのでしょう。

10代のジャコはバンド活動などを行いつつ、ベースを使って「自分だけの音」を探り続け、発見する「冒険」を始めます。ベーシストであるジャコの原点は聖歌隊で歌った美しいメロディであり、少年時代に熱中したドラムのリズムでもあるのです。

ベースの可能性を模索し続けた10代

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ベースの可能性をジャコは10代で模索しています。この模索する10代の間に、現在でも多くのベーシストが使用するハーモニクス奏法も発見しました。それだけジャコは「自分の音」への探求心が強かったと言えます。

ベースという楽器で「自分の音」を模索するジャコは理想のベースを作り上げるため、さまざまな試行錯誤を繰り返しています。

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「自分だけの音」の探求で生まれたフレットレスベース

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2種類のフェンダージャズベースのボディとネックを入れ替えたり、理想的な音を出せる弦を選んでいます。弦に関しては生涯、ロトサウンドのラウンドワウンド弦を使用し、まさしくジャコの求める音を出し続けました。

アンプもジャコは選び抜き、アメリカのアコースティック社製ベースアンプModel#360が「自分の音」を出すために最適と結論付けます。それでもまだジャコの求め、探している「自分の音」は見つかっていません。

そのジャコは理想のベースを求め、試行錯誤を重ねた結果、愛用のジャズベースからフレットを抜くことを思いつきます。

しかしフレットを抜いただけでは、肝心な音に支障が出るため、フレットをまず船舶塗装用の樹脂で埋め、さらにベースの指版全体をエポキシ樹脂でコーティングしました。

ここでフレットレスベースの原型が出来上がっていますが、そのままでは演奏できませません。そこでギター職人ジョン・カラザースの手でこの改良したベースはリペアされます。こうしてフレットレスベースは完成に至りました。

弦、ベースアンプ、フレットレスベースが揃ったジャコの「冒険」は、こうして本格化します。このときジャコはわずか19歳の青年でした。

ジャズへの傾倒、プレイスタイルの確立

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ジャコのトレードマークともいうべきフレットレスベースを手にしてから、彼のプレイはレアなグルーヴと繊細かつ大胆なフレーズで構成されていきます。フレットがないため、なめらかな音運びが可能になったわけです。

その際にジャコの独特なフォームであるベースを抱え込むようにして高い位置で弾くという「ジャコ弾き」が出来上がっていきます。

この「ジャコ弾き」はフレーズを巧みに作り出すため、作りだしたフォームです。早いパッセージに対応するために指のポジションも素早く変えられるようにとジャコが自然と選んだのです。

ジャコはハーモニクスごとに弦に触れる指を変えています。これもベースを弾いた経験がある方ならおわかりでしょうが、高度な技術です。それだけジャコは「自分の音」を作り出すため、あらゆる演奏方法を試した結果でしょう。

またベースを弾く際に右手のポジションはブリッジ側ピックアップの上に親指を置いたまま、人差し指と中指を伸ばしたままで指の付け根を軸に演奏しています。これも早いパッセージに対応できるように選ばれたポジションです。

こうしてジャコは「自分の音」を奏でられるフォームとポジションを得ることで、プレイスタイルをさらに確立していきます。ジャコ独自のフォームやポジションは今のベースの基礎にも選ばれているスタイルです。

特に2フィンガーで弾くベーシストはジャコのスタイルを無意識に基本にしています。

ベースに有利な身体とアルバムデビュー

ジャコはメロディアスにも、リズミックにも、パーカッシヴにもベースを弾いています。「ジャコ弾き」であるからこそ、素早く対応できたのです。早いパッセージとハーモニクスを生かすための弾き方でもあるといえます。

またジャコは手が大きい上に指が長く、しっかりしているという身体的特徴がベーシストとして有利になっていました。

プレイスタイルの確立をできた時期、ジャコはマイアミ大学で行われていたジャズクリニックの講師の一人になっています。そこでブランド・スウェット・アンド・ティアーズのドラマーであるボビー・コロンビーと知り合いました。

ジャコのプレイとテクニックに惚れ込んだコロンビーは1976年のジャコのデビュー作「ジャコ・パストリアスの肖像」のプロデュースを行っています。

ジャズドラマーとしての挫折が、ベーシストとしての才能を開花させるきっかけとなったジャコ・パストリアス。

運命的に彼はベースの革新者となることが決められていたのかもしれません。

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