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SRVラストステージ~ドラッグによって失われた輝き

ドラッグやアルコールが原因でこの世を去ってしまったアーティストは数知れません。とくにドラッグに関しては命を危険にさらすことになると解っていても中毒を克服するのは簡単なことではないのです。

1990年にこの世を去ったスティーヴィー・レイ・ヴォーンも深刻なドラッグ、アルコールへの依存に悩んでいました。しかし、その死の原因は決してドラッグでもアルコールでもなく、不幸な事故だったのです。

一時は中毒症状からまともにギターをプレイすることができない状態にまで陥っていたレイ。しかし、彼は強い意志によって深刻な中毒症状を克服することに成功しました。

当サイトではこの偉大なギタリスト、SVRのギタープレイや機材について別のカテゴリーで書かせていただいています。

しかし、特集コラム「企画~「ザ・ラストステージ」では彼のドラッグ・アルコール中毒の克服、そして悲劇的な事故死について見つめてみたいと思います。

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成功とドラッグへの依存

レイが本格的にドラッグやアルコールに依存するようになったのは、ギタリストとしてオースティンを中心に注目を集め始めていた75年前後でした。

そのきっかけを作ったのが、当時のバンド、トリプル・スレット(後のダブルトラブル)のヴォーカリストであったルー・アン・バートン、そしてレイの最初の妻であるレニーです。

ルーとレニーの共通点は、ドラッグとアルコールへの深い依存でした。この2人と生活を共にする中で、彼もそれらに手を出すようになってしまいました。

とくにレニーと一緒に暮らすようになってからは、常にウイスキーとコカインを手放すことができないほどの状態になっていました。

レイ

当時のレイ。愛機「ナンバーワン」もまだピックガードが交換されていません。

ルー・アン・バートン

ルー・アン・バートン。レイとのバンド解消後には兄のジミー・ヴォーンとも共演しています。

堕落する一方で高まる人気

この状況を誰もが黙って見ていたわけではありません。最初に彼をとがめたのが、ルーをのぞくバンドのメンバーたちでした。

しかし、常に酩酊状態であったレイがまともに取り合うわけがありません。うるさく注意するメンバーを彼は切り捨ててしまったのです。

ギタリストとしての評価が高まり、天狗になっていたことも影響して彼は傲慢になっていました。

結局その数年後にはルーとも音楽的な違いから別れることになり、トリプル・スレットは完全に別のバンドとなってしまいました。

ルーと離れたからと言ってドラッグ漬けの生活から抜け出すことができるわけがありません。ウイスキーとコカインへの依存はより強まり、摂取量も増えて行く一方でした。

生活が堕落して行くのと反比例するように、ダブル・トラブルと名を変えたバンドの人気は高まって行きました。

成功に向かっているのだから、自分のやっていることは間違ってなんかいない。レイはそう考え、突き進んで行くばかりになってしまいました。

派手なパフォーマンスもレイの売りの一つでした。

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誰にも止められない

70年代も後半になると、スティーヴィー・レイ・ヴォーン率いるダブル・トラブルの名声は全米レベルにまで広がっていました。

いつの間にかレイはどこのクラブでも必ず満員にすることのできる唯一のブルースロックギタリストになっていたのです。

その名があがって行けば当然入ってくるギャラもどんどん増えて行きます。そうなれば、さらに多くのコカイン、そしてウイスキーを購入することができるようになるのです。

大規模なギグをこなすようになれば、当然バンドのメンバー以外にスタッフが必要となり、レイは多くの人を雇うようになりました。

以前よりも多くの人が彼の周りに集まるようになりましたが、誰一人彼を止めようとはしませんでした。養われている以上は、誰も彼に逆らうことはできなかったのです。

多くの人に囲まれながらも孤独であった彼は、ますます恋人のレニーに依存するようになりました。それはより深くドラッグの世界にのめり込むことを意味していたのです。

ギターを弾いているとき以外は、レニーと共にドラッグを吸引し、アルコールを流し込む…常に酩酊状態であった彼はまったく正しい判断をすることができなくなっていました。

そんな彼を見かねて、唯一声を掛けたのが、レイの尊敬する偉大なブルースマンの1人であるB.B.キングでした。この時期からレイの高い才能に注目していたB.B.はいくどとなく彼に警告しました。

しかし、尊敬するB.B.の警告さえも彼の耳には届いていませんでした。

B.B.キング

ブルース界の重鎮、B.B.キング。レイにとっても憧れの存在であった彼でさえ、当時のレイを止めることはできませんでした。

ついにプレイにまでおよんでしまった中毒症状

ドラッグとアルコールによる中毒症状は、ついにはギタープレイにまで影響をおよぼしてしまいました。

80年代に入ると立て続けにダブル・トラブルは3枚のアルバムをリリースしています。1枚目は生涯にわたるレイの代表曲となった「Pride and Joy」やギターインストの最高峰とも言われる「Lenny」の収録された「Texas Flood」です。

スティーヴィー・レイ・ヴォーンというギタリストの魅力を凝縮したかのような傑作で、ファンの間で、もっとも人気の高いアルバムでしょう。そのレコーディングの段階ですでに彼の体は中毒症状によって蝕まれていました。

ですので、それ以前のクラブなどでのプレイを知っているファンや評論家たちの中にはこれは本来のレイではない、そんな声をあげる人も少なくありませんでした。

その翌年に発売された「Couldn’t Stand the Weather」になると、さらに中毒症状が悪化しているのがはっきりとわかります。アンプやエフェクターなどの使用機材が若干変わったことによるサウンドの変化を考慮しても、明らかにピッキングが荒く、キレがなくなっているのです。

もちろん、これ以降のレイのトレードマーク的な楽曲となった「Scuttle Buttin’」などは名演であることは間違いありません。しかし、プレイの衰えを感じざるを得ません。

サードアルバムの「Soul To Soul」になると、さらにプレイの衰えははっきりとします。彼を代表する名バラードである「Life Without You」などの名曲を収録しているにも関わらず、セールス的にも前作を超えることができていません。

ファンははっきりとレイの衰えを知ったのでしょう。

こうしてレイはドラックとアルコールに溺れ、自分自身を失いかけてしまいました。ここからどうやって復活を遂げたのでしょう?

By チリペッパー眞木

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