Global Information site~siruzou

分福茶釜のあらすじとルーツ~日本と西洋の動物物語の違いとは何か?

2014.03.15

分福茶釜のあらすじとルーツ~日本と西洋の動物物語の違いとは何か? はコメントを受け付けていません

model_chagama4日本の昔話の中でも有名なストーリーの一つ「分福茶釜(ぶんぶくちゃがま)」。
この記事ではそのあらすじとルーツを紹介し、西洋の動物物語(イソップ童話など)との比較から、日本と西洋の民族性の違いを解説します。

「分福茶釜」のあらすじ

一言でいうと「たぬきの恩返し」です。

ある男に助けてもらったたぬきが「茶釜になって恩返しをする」というものです。

最初は単純に茶釜になって「私を売ってお金にしてください」という方法でした。

スポンサーリンク

それで男は売ったのですが、売られた先で、茶釜なので当然熱湯を入れられました。

それで「熱くてたまらない」ということでタヌキは逃げてきます。

しかし、恩返しはしたかったので、今度は「綱渡りを見せて、それでお金を稼ぎます」と提案します。

「茶釜が綱渡りをする」ということで、この見世物は話題になり、たくさんの「興行収入」も男の元に入りました。

これでめでたく、タヌキは恩返しをできた、というあらすじです。

(熱湯を入れられたら熱いに決まっているのに、最初にそれに気づかないところが可愛いですね。笑)

日本と西洋の動物物語を比較する

「動物を扱った物語」は、西洋にもたくさんあります。

イソップ童話やアンデルセン童話など、小さい頃に読んだ経験がある方も多いでしょう。

西洋の動物物語をジャンル分けすると、下のようになります。

①擬人化

『イソップ童話』『アンデルセン童話』が典型です。

イソップだと『アリとキリギリス』、アンデルセンだと『みにくいアヒルの子』が有名ですね。

これらの作品は「擬人化」という点では分福茶釜と似ています。

しかし、人間との交流はなく、動物(もしくは昆虫)の世界で完結している点が異なっています。

②観察型

『シートン動物記』『ファーブル昆虫記』が典型です。

ただの観察日誌と違い、読み物として楽しめるように工夫されていますが、内容はあくまで「観察」です。
(観察がかなりリアルなので、擬人化のように感じる時もありますが、あくまで観察です)

スポンサーリンク

③交流型

『名犬ラッシー』『フランダースの犬』が典型です。

人間と動物が交流するという点では、分福茶釜にも似ています。

ただ、決定的な違いは「人間目線」ということです。

ラッシーもフランダースも、両方共「飼い主の少年の視点」で物語が進んでいきます。

もちろん、それでもラッシーやパトラッシュに対する愛情はしっかり伝わってきますし、犬の気持ちを描いていなくても、犬の行動を見れば気持ちもわかります。

しかし、「完全に動物目線」という点では、分福茶釜の方が「より動物寄り」と言えるでしょう。

日本の動物物語の特徴を一言で言うと?

このような違いを一言でまとめると、日本の動物物語は、「動物を人間と同じと考えている」と言えます。

完全に同じではないですが、西洋と比べると遥かに距離が近いといえます。

神道と仏教の思想から来ている

この理由は「神道&仏教」から来ています。

神道は知っての通り、「八百万の神」として、動物や植物、あるいはただの石ころなど、すべての物に神が宿るという思想です。

これが古くから土着の宗教として根付いていた日本では、当然昔話でも、動物が人間に近くなっているわけです。

そして仏教でもこれとよく似た教えで「草木国土番皆成仏(しっかいじょうぶつ)」という言葉があります。

文字の通り、「草木や土などもみんな成仏することができる=生きている」ということです。

戦国時代以前の日本には神道と仏教以外の宗教はほぼなかったので、この二大宗教の思想は、そのまま昔話にも生きたのです。

その二大宗教がこのように「ぼくらはみんな生きている」と言っているわけですから、「トンボだってオケラだって」、人間のように考えて行動するキャラクターとして、描かれたわけです。

さらに古い擬人化作品「鳥獣戯画」

「鳥獣戯画」は、平安時代に描かれた絵巻物です。

鳥や動物を擬人化して、当時の世相を表現しており、「動物の擬人化を絵にしたストーリー」としては、世界史でもかなり古いものです。

漫画的要素が強いため、「世界で最初の漫画」と評価されることもあります。
(少なくとも、日本人の漫画のルーツなのは間違いないでしょう)

このような作品を見ても、ぶんぶく茶釜よりかなり前の時代から、日本人の間で動物の擬人化は当たり前だったことがわかります。

文化というのは何でも、こうした「当たり前」によって生まれるのでしょう。

「分福茶釜」の発祥の地は?

最後に、分福茶釜のルーツも説明しておきましょう。

発祥の地は、群馬県の茂林寺(もりんじ)というお寺です。

曹洞宗のお寺で、「タヌキが化けた」とされる茶釜が今も伝わっています。

「ぶんぶく茶釜」と検索すると、キーワードの候補で「札幌」「弘前」などと北国の地名がたくさん出てくるので、一瞬北国のストーリーなのかと思ってしまいますが、これはラーメン屋さんの名前です。
(茶釜だから北国、というのは連想しやすいので間違える人も多そうですね)


以上、分福茶釜のあらすじとルーツ、西洋の童話との比較をしました。

参考にしていただけたら幸いです。

スポンサーリンク

Pocket
LINEで送る

関連記事

コメントは利用できません。

知る蔵のTwitter~フォーローをお願います

知る蔵グループ関連専門サイト