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フィンランドの子どもはのんびりなのに学力で日本より上なのはなぜ?

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フィンランドといえば、オーロラとサンタクロース、ムーミンの国です。

のんびりとしたイメージがありますが、この国の子どもたちは、OECD(経済協力開発機構)が3年ごとに行なっている学習調査「PISA」において、すべての分野で日本を上回り、毎回世界トップクラスの成績です。

フィンランドには日本や中国、韓国のような学歴重視のシステムはなく、テストでは点数評価がされません。

授業時間はOECD加盟国で最も少なく、学習塾は存在せず、義務教育を終えると半数以上が職業系の高校に進学します。

フィンランドの子どもたちは、どうして学力が高いのでしょうか?

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PISAは主要先進国が参加する学力調査です

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PISAは2000年に開始され、世界65か国・地域・都市で開催されている学力調査です。

地球上の半分以上の地域、世界経済の7割をカバーし、もっとも進んだ国際調査とされています。

総合読解力、数学的リテラシー(能力)、科学的リテラシー(能力)の3分野で行なわれ、学校のカリキュラムをどこまで理解したかではなく、これから何ができるかを測るものになります。

知識や経験をもとに将来の生活に関する課題を考え、知識・技能を活用する力の有無を得点化するテストです。

日本を上回るのは、アジア諸国を除くとフィンランドだけ

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2009年の調査では、日本は総合読解力で8位、数学的リテラシーで9位、科学的リテラシーで5位と世界トップクラスでした。

すべての分野で日本を上回ったのは、上海、香港、シンガポールとフィンランドです。

2分野で上回ったのは韓国です。上海は「都市」としての参加ですので、中国全体のレベルを代表してはいません。

アジアの国・地域・都市は、いずれも高学歴化と就職難で受験戦争が年々加熱しており、日本以上の学歴至上主義があると言われています。

世界のトップクラスになるのは当然とも言えるでしょう。不思議なのはフィンランド。し烈な競争のない国なのに、成績は常にトップクラスです。

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↑日本人は読解力は弱いようです。

フィンランドはどんな国?

フィンランドが北欧の国だと知っていても、地図上でどこにあるのかを正確に指し示せる人はそれほど多くないのではないでしょうか?
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↑ここです。西はスウェーデン、東はロシア、北はノルウェー

 国土の4分の1は北極圏に属し、北部ではオーロラを見ることもできます。白夜もあります。

国土の69%が森林、10%が湖と、美しい自然に恵まれた国です。

面積は日本より少し小さい約34万平方キロ(日本は約38万平方キロ)、人口はおよそ520万人と東京の半分ほどです。

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GDPは2,476億ドルと世界44位。約6兆ドルで世界3位の日本には遥かにおよびませんが、一人あたりのGDPは45千ドルで16位です。

12位の日本(46千ドル)とほぼ同じ程度です。かなり豊かな国と言えるでしょう。

企業としては携帯電話のノキアが有名です。サンタクロースのふるさととされ、「サンタクロース村」があります。

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↑サンタクロースが勉強を教えている?

「世界で一番の国」とも言われます

アメリカの雑誌「ニューズウィーク」が2010年に発表した国別総合ランキングでは、「世界で一番の国」に選ばれました。

学校教育、健康、社会福祉、人権、経済、政治などの各種指標を総合的に評価した結果です。

また、イギリスのレガタム研究所が2009年に発表した「繁栄指数」でも、1位に選ばれています。総合的にみると、かなり豊かな国のようです。

子どもたちはテレビを観ているうちに語学を習得!?

フィンランドの公用語はフィンランド語とスウェーデン語。この両者はルーツが異なるので、全く別の言語です。両方とも覚えるのは大変でしょう。

フィンランド語は日本語と音が似ていて、同じ発音の単語も多いそうです。例えば「スシ」(意味は狼)、「カナ」(めんどり)、「キッサ」(猫)、「アキ」(男性の名前)、「ココ」(全部)などがあります。

フィンランドの子どもたちは、これに加えて小学生のうちから英語も学習しますが、幼少時からテレビを観ることで、ある程度語学をマスターしているそうです。

遊ぶことが第一!の教育で語学力も身につく

フィンランド人は、子どもが小さなうちから机上の勉強をすることは良くないことだと考えています。

たくさん遊んでいい子ども時代を過ごすことが大切とされ、勉強はそれにふさわしい年齢になってからするものとされています。

幼稚園で文字を教えたりはしませんが、子供たちの多くはテレビから学んでいます。

ゴールデンアワーには欧米の映画やテレビ番組が放送されますが、ほとんど吹き替えなしの字幕のみのため、必然的に文字を覚えてしまうのです。

これは、「子どもたちが面白いアニメを観るためには字幕を読めなければならない」という状況を作ることで、学習効果をもたせようとテレビ局が考えたアイデアだそうです。

幼少期から母国語に目が慣れ、英語やドイツ語などに耳が慣れるため、遊びながら読解力と語学力が同時に身につくのです。

中学生くらいになると、字幕なしに英語の映画を観られるレベルになる子も少なくないそうです。

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とにかく親はたくさん本を読んであげる

フィンランドでは、子どもの教育は国がするものという意識が強いため、子供が生まれると、「赤ちゃんパック」というセットが国からプレゼントされ、この中には子ども服一式、おもちゃ、母乳パットなど30品目と絵本が一冊入っています。

幼少時から親が毎晩ベッドで本の読み語りをするのが習慣で、ほとんどの家庭がしているそうです。

外出時にはバッグに絵本を忍ばせ、落ち着ける場所があればどこでも親は絵本を読んであげるのが「ごく当たり前」だそうです。

図書館は日本の5倍もあります!

図書館は「国民の居間」といわれ人々の集う場所となっているそうです。対人口比で図書館の数は日本の5倍、借りる本の冊数も5倍です。

家庭で読む本は国が用意する、という考え方が定着しているからですが、それでも、1家庭あたりの蔵書数は、日本の6.6冊に対し13.6冊と倍以上です。

子どもたちは現金を持たないから、自然の中で遊ぶしかない!?

フィンランドの子どもたちは学校から帰ってくると、自然の中で友達と遊ぶのが普通です。

ゲームセンターは未成年の立ち入りが禁止されていますし、子どもが現金を持たされることはほとんどないため、お金のかかる遊びはできません。

学習塾は存在しないため、子どもは外で遊ぶが、図書館に行くしかないのです。

学校のテストは採点されない!?

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フィンランドにもテストはありますが、ほとんど採点はされないそうです。

テストは他人と比べるためのものではなく、個々人の学習レベルを確認するためのものとされ、学習への自覚を促すためテスト用紙には「自己評価欄」があり、教師のコメント欄があります。

もちろん、成績表には点数が付けられます。ただ、小学校低学年は文章での評価のみで、高学年になると三段階の評価をされます。

中学では10段階評価となり、中3(9年生)の時点で、もう少し学びたいという場合には、10年生に進学して1年間余分に学習することも可能です。

慌てて卒業するよりも、必要な能力をしっかり身につけることが大切という考え方なのでしょう。

中学卒業後の進路は5割以上が職業高校

フィンランドの学校では工作の授業に力を入れており、雑誌を教科書にして洋服を作ったり、クリスマスツリーを作ったりするなど、学校と生活とが結びつき楽しく学ぶ環境があるそうです。

そのためか、基礎学校(小学校・中学校)を卒業すると、専門学校(職業系高校)に進学する人が5割を超えています。

専門学校では、社会に通用する力を身につけるための学習を行ない、3年生になると企業研修がカリキュラム化されています。

実際に家を建てて市民に販売したり、生徒が学校で臨時教員として働いたりもするそうです。

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↑校舎もユニーク!?

職業高校からも普通高校からも大学進学できます

普通高校では大学で学ぶことをはっきりと決めなければなりません。どの学部・学科に進学するかを決めた上で、高校生活を送るのです。

大学は全て国立で、入学のためにはまず国家試験を受験しなければなりません。国家試験でどの受験科目を受験するかを決めた上で、高校の授業を選択します。

職業高校からも大学受験は十分可能で、大学入試に必要な科目を履修するために、普通高校と掛け持ちで通学することもできます。

大学は3年制で大学院は2年、また、高等教育機関として4年制(3年もあり)の高等職業専門学校もあります。

点数順に進路が決定されるという仕組みではなく、個々人が自分にふさわしい学力を身に付け進学する、という考え方が原則です。

もちろん、「偏差値」はありません。大学および高等職業専門学校への進学率は7割以上と世界でもトップクラスです。

大学入学資格国家試験は1科目6時間!?

大学に入学するためには、国家試験をパスした上で各大学の試験を受験します。国家試験は食事を持ち込んで、1科目につき6時間かけて行われます。

目指す学部によって科目数は異なりますが、最低でも4科目うけなければならないため、6時間×4科目=24時間以上はかかります。

大学ごとの個別の試験では、ペーパー試験に加えて、適性検査や集団面接・個別面接があり、学部ごとに特別な試験をする場合もあります。

教育学部の試験で、模擬授業をさせたりすることもあるそうです。

「補習」は、やる気になった子が集中してたくさん学ぶこと

フィンランドの教育の目標は子どもの自立。そのため、「読み書きそろばん」を重視します。

小学校低学年で、読む、書く、話す、算数、外国語、については、基礎的な学力が不足している子は補習を受けることになります。

これは、できの悪い子が受ける、というものではなく、多めの支援を受けてたくさん学ぶと捉えられていて、恥ずべきものではありません。

能力の不足分を積極的に吸収しようとするもので、小学1年生では4割近くの子どもが受けているそうです。

先生は高学歴で、授業にはゆとりがあります

フィンランドの小中学校の教師はほとんどが大学院卒。平均して8時前に学校に着き、15時に帰宅します。

教師の在校時間の平均は7時間1分で、日本の11時間26分よりも4時間以上短いのです。

帰宅してから就寝まで、家庭で過ごす時間は、日本の教師の3時間53分に対し、フィンランドは7時間13分。

日本よりも3時間20分も家庭生活にゆとりがあることになります。

睡眠時間も日本の教師の6時間23分に対し、7時間43分と1時間20分も長く、連続休暇(夏期休暇)は日本の平均5.7日に対して、63.2日。ほぼ2か月も日本より多いのです。

フィンランドの教師はゆったりとした生活をし、授業について考える時間も心のゆとりもあるようです。

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フィンランドでは、大学に入学するために学ぶのではなく、生きるために学ぶという意識で教育が行なわれているようです。

そのため、詰め込むのではなく、考え身につけるという学習になるのでしょう。

国を挙げて教育に力を入れていて、教師の裁量も大きいようです。ちなみに、フィンランドには「検定教科書」はありません。

授業の内容も個々の教師の裁量で決められるので、クラスによって授業内容も異なります。

教師には時間的なゆとりがあるため、さまざまな創意工夫をするだけの余力もあるのでしょう。

1クラスが20人程度と人数が少ないことも、教育の質を高めているとも言われます。

教育の質は「PISA」という試験の結果だけで判定できるものではないでしょうけれど、フィンランドの教育システムには、わが国が学ぶべきところもあるのではないでしょうか。

by 水の

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