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スプツ二子!のポップな魅力~理系女子のつくる奇想天外な芸術作品群

2014.05.22

スプツ二子!のポップな魅力~理系女子のつくる奇想天外な芸術作品群 はコメントを受け付けていません

物理学者の祖父をもち、数学者の両親のもとに生まれた現代アーティストのスプツ二子!は、根っからの理系です。

本人も科学の道をこころざし、思春期は数学などに心血をそそいでいました。しかし、ある時彼女の歩む道は変わります。

2007年よりデジタル・デバイスを用いた創作活動をはじめ、またたく間に現代アーティストのひとりとして名を広めました。ポップな魅力にあふれた作品群は、いったいどのような考えのもと生みだされているのでしょうか。

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理系女子のつくる奇想天外な作品

1985年、スプツ二子!は数学者である日本人とイギリス人の両親のもとに生まれました。中学や高校の時は数学に熱中し、大学はインペリアル・カレッジ・ロンドンの数学科および情報工学科を卒業、その後に芸術を学んだそうです。

そしてロイヤル・カレッジ・オブ・アートの卒業展で三つの作品を発表し注目を集めることとなります。当時ロンドンで暮らしていた彼女の創作物は評価され、日本の現代美術館の「トランスフォーメーション展」でも展示されました。

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▲上の画像は卒業展および企画展にだされた作品の一つ『寿司ボーグ☆ユカリ』の一部です。これには近未来の東京で開発された女性型サイボーグが「かわいい接客用の機械」という役割に疑問をもつという設定があります。

理系女子ならではの考え、文明と性にたいする警鐘

作品は映像や写真などで表現され、自身に与えられた仕事から抜けだそうとするサイボーグの様子が描かれました。働いている寿司屋から脱出するため『寿司ボーグ☆ゆかり』は自分にナイフを取りつけ、客たちを殺してしまいます。

映像や現物のマシーンなどの展示品を通して考えるのは、人と機械の境界線はどこかといったことや文明の進歩がもつ危うさ、そして女性蔑視についてです。他の作品でもスプツ二子!は、社会での女性の立場に疑問を投げかけています。

特に日本は先進国であるにも関わらず、いまだに男尊女卑の傾向が根強く残っており、イギリスで育った彼女にとって窮屈な環境なのかもしれません。ですから男女平等にあつかうことの重要さを、作品を通して訴えているのでしょう。

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尽きることのない生物への好奇心も作品になる

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▲次に紹介するのは、同じく卒業展および現代美術館で展示されたもう一つの作品『カラスボット☆ジェニー』です。名前の通りカラスとコミュニケーションをとるため、大学の教授の協力のもと制作されました。

作ろうと思い立ったのは、ダナ・ハラウェイの『When Species Meet』を読みインスピレーションを得たからだそうです。作られたカラスボットは録音されたカラスの音声を発し、あいさつや求愛の声を伝えることができます。

上記のものにどのようなメッセージ性があるかは残念ながらわかりません。見る人に何かを伝えるためというよりは、純粋に知的興味から作りだしたものなのではないでしょうか。理系の女性ならではの創作欲かもしれません。

重要な問題を面白おかしく見せる才能

以上、二つの作品からわかるのは、スプツ二子!が科学的の進歩や文明の発展と、社会における性の在り方というものに焦点をあてて創作を行っているということです。ポップで面白い演出で発信されるメッセージは、人々の心を捉えます。

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▲こちらは『菜の花ヒール』という作品で、ヒールの先端から菜の花の種が地中にまかれ、花が咲いていくというものです。菜の花が放射性物質を吸収することを利用して、土壌汚染などに対してメッセージを発しているのでしょう。

普通ならば、このような社会や環境に関わる重大なメッセージを込めた作品は、重苦しく難しいものになってしまいます。しかし彼女はヒールを用いることで女性的な美しさに包み込み、人々の目を楽しませるものにしました。

科学的見地にたって分析できるからこそ持つ作品の魅力

おかげで普段美術に関心のないような方の興味も引き、結果として多くの人が、彼女の提起した問題に思いを巡らすこととなります。また、ただ作品を見るだけでも面白いので、軽い気持ちで知り合いや友人と見ることも可能です。

なぜ、これほどにスプツ二子!の作品が取っつきやすいものかと言えば、彼女が数学などを学んだ理系女子であり、人の目を集めるにはどうすればいいかを科学的に分析し、考えることができるからでしょう。

つまりスプツ二子!の作品すべてには常に物事を数学的、そして科学的に捉える視点があり、だからこそ的確かつ鋭い切り込みを社会に入れることができるのでしょう。彼女がこれからどのように活躍していくのか、楽しみでなりません。

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スプツ二子!は現在もっとも注目されているアーティストの一人であり、芸術的感性と科学的分析力をあわせもつ珍しい人物です。根っからの芸術家ではない人間だからこそ、今までにない発想で作品をつくることができるのでしょう。

おそらく今後も、思わず人が見に行きたくなるような作品を次々と生みだしていくはずです。その時、観客が考えるべきは作品のことだけではなく、見るべき側の自分たちさえも、観察の対象になっているということでしょう。

なぜならスプツ二子!の作品がもつポップさとは、科学的見地をもって人々を観察した結果、意図的に加えられたものだからです。見ている自分さえも作品の一部と考えることで、ようやく彼女の創作について理解できることでしょう。

By筒井

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