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フィアスコという藁で包まれたワインの丸底ビンを最近みかけない理由

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日本でもエノテカに行くと、底が藁でつつまれた丸い形のビンを見かけることがあります。

この特徴的なビンのことを、フィアスコといいます。この中に入っているのが赤ワインなら、それはほぼ間違いなくキャンティ産です。

キャンティとは、イタリア中部に広がる丘陵地帯のことで、古くからブドウの産地として有名な地域でした。この地方で産するワインは、海外でも抜群の知名度を誇っています。

しかし、お店に置いてあるキャンティのほとんどは、通常の細長いボトルに入っています。素朴な藁の手触りが魅力の、あの丸いビンに入った商品は、日本ではたまに見かけるくらいです。

イタリアでも、あの容器に入ったお酒を見つけるのは難しくなりました。今やこの国でも、藁に包まれた丸ビンは姿を消しつつあります。

このボトルにとどめを刺したのは、80年代後半から世界中に広まったワインブームでした。このブームに乗って高級マーケットに参入したい業者は、ボトルの形を変えることで、ブランドのイメージを一新しようとしたといいます。

流通範囲を広げるうえでも、あの形は不利でした。フィアスコはとにかくかさ張るため、輸送するにも、エノテカの棚に並べるにも向かなかったのです。

ワイン業界の転機と、時代に取り残されたフィアスコの現状についてご報告します。

キャンティワインとフィアスコは、トスカーナの農家が昔から作り続けてきたものです

キャンティを入れるための、真ん中の膨らんだ丸い形の容器は、15世紀のトスカーナ地方の絵画の中にも描かれています。

丸型のビンは、この地方では、少なくとも500年もの間ごく普通に使われてきたようです。現在の細長いボトルが普及するまでは、この形は、イタリアのほかの地方でもよく使われていました。

藁で包まれているのでよく見えませんが、あの容器の底は平らです。藁なしでも、テーブルの上に安定して置くことができます。中央から底にかけての部分を藁で包んでいるのは、ぶつけたときに割れにくいようにするためです。

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▲ルフィナという町にある博物館では、19世紀から20世紀前半までの間に使われていた、たくさんのボトルを展示していました。昔のものはビンの形も一定していません。藁の編み方やかぶせ方にもいろいろなパターンのあったことがわかります。

藁に使われるのは、普通はトウモロコシの皮です。展示をみる限りでは、昔は、藁の組み方もいろいろあったのがわかりますね。

当時は、藁編みはもちろん手作業です。農家の女性たちは、農閑期に藁を編み、あれこれと小物を作って副収入を得ていました。容器を藁で包むのも、そうした女性の内職のひとつだったそうです。

現在出回っている製品は、すべて機械で製造されているので、こうした農家の習慣もすっかり廃れてしまいました。

おじいさんや曾おじいさんの世代では、今のものよりずっと味のあるボトルを使っていたようですね。少しうらやましいです。

姿を消してしまったのはなぜでしょうか

古いイタリア映画を見ていると、食堂でこのワインが置かれているシーンがたまに出てきます。ハリウッド映画の『ローマの休日』の中でも、さりげなくこれが出てきました。

当のイタリア人にとってだけでなく、外国人にとっても、藁で包まれたあの丸いボトルはイタリアの日常風景のひとつだったのです。

とはいえ、普段から気軽に飲めるということは、それが安いということも意味します。実際キャンティ産といえば、生産量が多く、イタリアでも代表的な安酒でした。

このイメージを嫌ったのが、トスカーナ州の業者で作っているキャンティ・クラッシコ協会です。

80年代後半から、この地方のお酒を海外市場へ出す事業に協会は取りかかりました。目標は高級酒のマーケットです。

高級感のある風味を出すために、ブドウの品種改良も行われました。さらにブランド戦略として、安酒のイメージの強い容器を、協会はなるべく使わないように業者に指導したのです。

丸型ビンが減っていった理由は、これだけではありません。

あの形の容器を大量に運ぶには、とにかくスペースが必要です。横にねかせてコンパクトに箱詰めすることもできません。お店で売るときにも、縦長のビンとはサイズがまるで違うので、いっしょの棚に並べにくいという問題があります。

丸型容器は、輸送にも陳列にも不便で、現代的な大量販売には向きませんでした。このためにフィアスコは、イタリアのスーパーから姿を消していったのです。

どこで売られているのでしょうか

丸底容器に入ったお酒は、イタリア人がふだんから使うスーパーなどではもう売られていません。レストランなどでインテリアとしてこのボトルが飾られていることはあります。でも一般家庭では、私は見たこともありません。

観光スポットに近い場所にある、大きなエノテカへ行ってみました。

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▲棚には、各地の有名銘柄が整然と並べられています。縦長ボトル入りのキャンティ産もここにありました。

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▲フィアスコは、こうして別にひっそりと置かれていました。

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▲インテリアとしても使われていました。

こちらのお店では、750ml入りで、約1,200円か2,000円です。観光客用に、かなり高めの値段設定でした。今のフィアスコ入りキャンティは、もはや安ワインとはいえませんね。形がかわいいので、装飾用としては重宝されているようです。

丸底ボトルは、観光用として細々と生き残っていました。でもこの値段だと、藁で包まれた丸底ビンのワインは、いまのイタリア人には普段飲みできないものになってしまったようです。

By 坂上

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