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名前の流行で時代が分かる~昭和前期には男子はみんな一文字だった?

2014.02.26

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子どもの名前には親の願いが込められるものです。

託されるのは豊かさ、知識、心、自然などさまざまですが、時代背景とも密接な関係があります。

シンプルなものが好まれたり、華麗なものが好まれたりする流行もあります。

名前の流行を見れば時代が分かるとも言えるでしょう。

特に「一文字」の名前には特徴的な面がありますので、それを軸に名前と時代を見てみましょう。なお、名前データには明治安田生命の公表しているものを使用しています。

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大正時代の親は年号の変化に敏感だった!?

明治から大正に、大正から昭和に、昭和から平成にと年号が変わる時期には、男の子の名前に変化が現れます。大正の初期には「正」の文字がよく使われるようになったり、昭和初期には「昭」や「和」がよく使われるようになりました。

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特に昔はその傾向が顕著に現れていたようです。明治から大正に移った元年には、トップ10のうち5つに「正」の文字が入っています。大正2年も同じく5つ、大正3年には4つ、大正4年になっても3つがランクイン。

その後も、毎年かならず「正」のつく名前が入りつづけ、昭和に変わるまで1つ以上が10位以内に登場しています。

この時代の人たちは現代の人たちよりも、「年号」に対する親しみや敬意をずっと強く抱いていたのでしょう。

面白いのは、大正元年(1年)には「正一」、大正2年には「正二」、大正3年には「正三」というように、年号そのままの名前が第1位になっていることです。やや単純すぎる命名にも感じられますが、素直な時代だったのではないでしょうか。

昭和に変わると「正」は消滅して「昭・和」に大変身!?

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大正時代には必ずトップ10にランクインしていた「正」は、昭和に移行したとたんに姿を消します。このことからも、命名に年号が深く関わっていたことが裏付けられるでしょう。

昭和の時代には、「昭」の字と「和」の字のどちらかが使われることが多くなります。両方とも、大正時代の名前にはまったく見られなかった漢字ですので、明らかに「昭和」に影響されての命名と考えられます。

大正時代と同じく、昭和2年には「昭二」、昭和3年には「昭三」と、とてもシンプルな名前が第1位にランクインしています。

平成になると、あまり年号は気にされなくなります

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大正、昭和の時代には、年号と命名とは深く関係していましたが、平成になるとあまり顕著な影響がみられなくなりました。平成元年から平成3年にかけては「平」の文字の入ったものが1つランクインしただけです。

昭和の時代には「平」は見られませんでしたので、年号との関連で登場したと考えられますが、影響はわずかだったようです。年号に対する思い入れが薄れたのでしょうか。人々がより複雑な思考をするようになったのかも知れません。

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1960年ころまでは漢字一文字のシンプルな命名が多かった!?

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大正時代から昭和にかけての名前には、「清」「勇」など漢字一文字だけの単純なものが主流でした。大正時代以降のトップ10の中に、一文字だけの名前がいくつあるのかをグラフにしたのが上図です。

1933年(昭和8年)から59年(昭和34年)までの27年間は、トップ10すべてが漢字一文字だった年が、19回あります。

残りの8回は10個中9個がそうです。大正元年には3つだけでしたので、大正から昭和にかけて「一文字」の人気が急激に高まり、そのブームが60年ころまで続いたということです。

1960年以降はじょじょに減り始め、70年代には5割前後になります。80年代には3割から4割となって、91年には10個中1つまで減りました。その後やや増加して、2000年代は2個から5個で推移しています。

シンプルな名前は景気変動と関係がある?

漢字一文字の命名が流行した背景にはさまざまな要因が関係しているのでしょうけれど、景気との関係もあるのかもしれません。

1933年から59年までの「一文字」ブームの時代は、戦争をはさんだ非常に厳しい時代でした。59年まで続いた「トップ10すべて一文字」は、60年から崩れ始めます。

60年にいきなり7個に減り、その後63年に6個、69年に5個と減りました。60年は池田隼人内閣の「所得倍増計画」のスタートした年で、ここから日本の高度成長期が始まりました。

70年代には増えたり減ったりを繰り返し、80年代に入って4個、3個と減少し、86年に2個、91年に1個となります。

ちょうどこの時期は、バブル景気の時代と一致しています。景気が良くなると、人はさまざまなものに興味を持ちやすくなるものです。そうした心理が命名にも影響していると考えられるかもしれません。

一文字の名前にはどんなものがあるのか?

大正時代に流行した一文字名のトップは「清」です。他に、「茂」「勇」「実」「弘」「博」「正」「進」などがありました。

「茂」や「実」は食糧の厳しさと関係している可能性があるでしょう。農作物の豊作を願ったのかも知れません。「勇」や「進」は戦争(第一次世界大戦)と関係があるでしょう。

昭和の戦前には、大正と同じく「清」「茂」「実」「勇」などもありますが、「勝」「勲」「武」「功」などの戦勝祈願と思われる名前が増えます。特に終戦までの3年間は毎年、「勝」が1位、「勇」が2位となっています。ティピカルに時代を反映しています。

昭和の戦後には、「勝」「勇」が完全に消滅して「博」「隆」「誠」「明」が登場し、時代の変化が感じられます。60年(昭和35年)には「浩宮様」(現在の皇太子)のご誕生があったため「浩」が大ブームとなりました。

57年から78年までの22年間では、18回「誠」がトップになっています。誠実さを求める「心の時代」だったのかも知れません。また、「学」「修」も登場して「受験戦争」「学歴社会」を反映しています。

1982年には初めて「翔」が登場します。それまで名前に使われることのなかった漢字です。「翔」の登場は画期的で、30年経った現在に至るまでブームが続く珍しい字です。

93年ころからは、これと並んで「翼」「駿」などの「翔」と関連する字、「陸」「湊」「蓮」「空」など自然と関連する字が増えています。夢を求める気持ちや自然回帰の欲求が反映されているのかも知れません。

景気が上向き始めたこれからの時代は、どんな漢字を使った名前がはやるのでしょうか? 一文字の名前は減っていくかもしれません。

by 水の

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