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「うちはがん家系だから...」~本当にがんは遺伝するんですか?

2014.03.28

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「うちはがん家系だから…」という話をよく耳にしますが、確かに遺伝的な要素の強いがんもあります。

しかし実際、大部分のがんは食事や喫煙、飲酒などによる「生活習慣病」である、という考え方が現在の主流です。

そもそも、なぜがんはできるのか?

がんは「細胞のコピーミス」から始まる、という話を聞いたことのある人は多いと思います。

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私たちの体は約60兆個もの細胞から構成されていますが、いずれも3~4ヶ月ほどしか寿命がありません。

死滅する前に、細胞はみずからと同じ情報を持った「子孫」ともいえる細胞を残していきます。これが細胞分裂です。

しかし何らかの原因で、細胞の情報であるDNAが正しく伝わらない場合があります。

これが細胞のコピーミス、つまりがんの始まりであり、専門用語では「イニシエーション」といいます。

それは大変だ、と思われるかもしれませんが、実は誰の体内でも1日に数千個のコピーミス細胞が生まれています。

しかし体内には、それを発見してはすぐに修復してくれる「免疫細胞」があるため、きれいに消去されて何事もなく済んでいるのです。

さらに私たちの細胞には、「がん抑制遺伝子」というものも存在します。

細胞は、常に全身で一定の数が保たれるよう自動的に制御されているのですが、がん細胞は増殖が速いため、放っておくと死滅する細胞より新たに生まれる細胞のほうが多くなってしまいます。

この時、異常増殖する細胞を死滅させて数を調節したり、新たにコピーされないよう歯止めをかけたりしてくれるのが、がん抑制遺伝子です。

つまりがんになるということは、免疫力が落ちて免疫細胞の働きが弱まっているか、もしくはコピーミスが多すぎて修復が間に合わなくなったからだと考えられます。

ほとんどの場合、がんが進行しないようなメカニズムが働いているのです。

がん家系は、「遺伝子の先天異常」がおもな原因

ただし、「がん抑制遺伝子」に生まれつき異常がある人がいます。これがいわゆる「がん家系」です。

がん抑制遺伝子は現在20種類以上が見つかっていますが、興味深いことにそれぞれ抑制するがんの種類が異なります。

たとえば「BRCA1/BRCA2」というがん抑制遺伝子に異常があると家族性乳がんに、「APG」というがん抑制遺伝子に異常があると家族性大腸がんにかかりやすいことが分かっています。

たとえば「家族性大腸ポリポーシス」といって、若いころから大腸に多数のポリープができる人がいますが、これはまさに遺伝的な体質によるものです。

将来的にそれらはがん化する可能性が高いため、腸の粘膜を全摘出することが一般的です。

また女性特有の乳がんと卵巣がんも、遺伝的リスクが高いがんです。

前述した「BRCA1」と「BRCA2」に損傷がある場合、「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群」といって、乳がんと卵巣がんにかかりやすいことが明らかになっています。

特に祖母や母親、姉妹などが発症している場合は注意が必要です。

近年、女優のアンジェリーナ・ジョリーが、乳がんになっていないのに両胸を全摘出したことが話題になりましたが、まさに彼女はこの症候群の家系だったと予想されます。

家系的にリスクが高いと思われる場合は、専門の施設で「遺伝カウンセリング」を受けることも可能です。

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全体で見れば、遺伝よりも環境要因のほうが大きい

ただし肝心なのは、がん全体のうち、遺伝によるものがどれくらい存在するのかということです。

あらゆる部位のがんにおいて、遺伝によるものはほんの一部であることが分かっています。

それを示す調査として、双子の追跡調査があります。

双子の中でも、両方がまったく同じ遺伝子を持つのが一卵性、50パーセント同じなのが二卵性です。

もしも同じがんになる確率が一卵性の双子に多ければ、がんには遺伝的な要素が大きいと考えられます。

asian babys and mother in the room

そこで多数の双子を対象に調査をおこなったところ、もっとも遺伝的要素が強く検出されたがんは、前立腺がん(42パーセント)、大腸がん(35パーセント)、そして乳がん(27パーセント)でした。残りはすべて生活習慣などの環境的な要因ということになります。

ですから、「がんの発症には確かに遺伝的な要素も一部存在するが、それ以外の要因のほうが多い」というのが実際のところなのです。

がんを予防する生活習慣とは?

生活習慣とがんの発症リスクを示したデータは複数ありますが、多くのがんにおいてもっともリスクを上げるとされるのが、喫煙です。

国立がん研究センターによれば、喫煙は肺がんのみならず、食道がんや胃がん、すい臓がんや子宮頸がんにおいても「確実に」リスクを上げる、と発表しています。

またタバコと比べて規制の弱い感じのする飲酒も、がんの重要なリスクファクターです。

特に肝臓がんと大腸がん、食道がんにおいて「確実に」リスクを上げると報告されています。

その他、たとえば食物繊維が少なく、動物性脂肪の多い食事は大腸がんを招きやすいことが分かっていますし、前立腺がんは乳製品によってリスクが上がることが明らかになっています。

ちなみにあらゆるがんのリスクを上げる要因として「欧米型の食事」が挙げられますが、唯一胃がんだけは例外で、塩分量の多い和食のほうが高リスクです。

その証拠に、昔から胃がんだけは日本人に多いがんでした。

ですから「がん家系だ」といってあきらめることなく、生活習慣を改善することが大切です。

すべてのがんに共通する予防策としては禁煙と節酒、そして野菜中心のバランスのいい食生活です。

もちろん適度な運動も加え、肥満や生活習慣病を予防することも欠かせません。

ただし遺伝的リスクが強いと思われる人は、遺伝カウンセリングも受けた上で、他の人よりも早い年齢からがん検診を受けることをおすすめします。

自分の体質を把握して早期発見に努めれば、万が一の際も治癒できる可能性が高くなるでしょう。

By 叶恵美

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